脇目も振らず、
過去を振り返ることもなく、
近道をしようとも考えず、
遠回りをしようとも考えず、
過剰に喜ぶこともなく、
無駄に悔しがることもなく、
平静を保ったまま
全力で敵の中を駆け抜ける。
かれは武道の達人で
相対した敵との闘いの上で
「戦術」という意味での
命の駆け引きには長けていた。
ただ、長い人生の中で上手に立ち回る
「戦略」
というものについては
彼自身不得手と考えていた。
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正面から敵意をむき出してにらみつけてくる男、
横目でこちらを見てニヤニヤと笑っている男、
その反対で涼しい顔で無関心を決め込んでいる男。
色々なタイプの敵を前にして、
彼は考え込んでいた。
「 どいつだ…
どの男が本当の敵なんだ…? 」
所詮こんなものはただのゲームだ。
それは十分に分かっている。
しかし、ここで負けるわけにはいかない。
どうにかしてここを切り抜けないと、
俺は次の階段を登れない…
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右隣のニヤニヤしている男がカードを切った。
「 ふふっ… 」
かすかに鼻で笑った気がした。
「 そういうことか…!! 」
その瞬間、彼は一瞬飛び下がり、
後ろに回り込みながら
にやけ面の男に飛び掛かった。
「 貴様ぁ~っ!
いい加減にハート♥の6を出せっ!
俺の『 ハート♥の5 』とか、
その後の色々いっぱい、
全然出せないだろうがぁぁっ! 」
ギリギリと腕をつかみ
七並べのごく当たり前のルールを叫んだ瞬間。
左隣の静かな男が
彼の順番を飛ばして
『 ハート♥の6 』を出した。
という瞬間のブルース・リー
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